背景と将来展望

Background and Future

なぜこの様なサイトが出来上がったのか?
建築業界とIT業界の生き字引が、その誕生背景と将来展望を語る。

プロフィール

中原 弘之(なかはら ひろゆき):ナカちゃん

1958年、福岡県博多生まれ
地元工業高校卒
1級建築施工管理技士、2級建築士、住宅性能評価員、住宅耐震診断資格者、応急危険度判定員 他

地場中堅ゼネコンにて、公共工事、戸建て等の建築に従事

1989年独立 自身にて工務店を経営
2003年 大手デベロッパー入社 マンション建設管理業務に従事
2008年 建築検査事業開始
・大手デベロッパーの戸建て住宅、マンションの検査業務を行う
・地場ゼネコン、中堅ビルダーのコンサルティング業務開始・専門は現場監督の教育育成

横田 尚正(よこた なおまさ):ナオ

1958年、東京都生れ
株式会社NJK入社(現在 株式会社NTTデータNJK)
UCSD Pascal、Modula2、MS_DOS等の日本製PCへの移植、並びに、各種パッケージソフトの開発、通信、制御系アプリケーションの開発、ワードプロセッサーの開発。

1989年株式会社アクセルを起業、「だれにでも使えるやさしい物へ」を企業理念に据え、パソコンやモバイル分野の各種アプリケーションの開発、並びに、サービス事業を手掛ける。IVR事業(音声情報サービス)、ボイスメール事業、インターネットFAX事業、など数多くの事業を輩出。

現在、DX関連事業の立上げに関わる各種コンサルティング業務、DXソリューションの企画開発、並びに、各種ビジネスモデルの企画等に従事。MVNO事業、IoTソリューション事業、遠隔医療事業等を立ち上げる。

建築はクレーム産業

横田 早速だけど、ナカちゃんは最近どんな仕事をしているの?

中原 ナオも知っている通り、元々は工務店をやってたんだけど、「建築はクレーム産業」と言われるように、どんなに頑張っても仕事をしても、それが当たり前で、逆にちょっと問題があるとすぐクレームを言われる業界だったんだ。そこで疑問を感じて、建築を作る側じゃなくて、検査する側になろうと思って、今の会社を作った。今はその発展形で、中規模の地元のビルダーやゼネコンからコンサルティングの依頼を幾つか受けて、それらにも関わっている。そこで、相談される内容はどの会社も「ほとんど一緒だ」とわかってきたんだよね。業種や年齢層が違っても内容はほぼ同じで、こんな感じなんだ。

・若手の現場監督が育たない。
・仕事を覚えたところですぐ辞めちゃう。
・はっきり言って年配社員が邪魔で扱いにくい。
・部下を教えられる上司がいない、育たない。
・忙しいのに利益が出ない。

 これらの会社は、大手ゼネコン出身者やその他のコンサルに相談して、コンサルティングをお願いした事があるみたいだけど、あまり役に立たなかったみたいなんだ。その理由は大きく2つあって、とても興味深かった。

 1つ目は、実際の現場状況を分からないコンサルタントが多いという事。2つ目は大手建設会社出身のコンサルタントの場合、ある程度の前提条件のもとコンサルティングを始めようとして、それが揃わない、反発されるというケースがある。例えばこんな事だね。

(A) 一定の教養と基礎レベルのある従業員
(B) ある程度の設備、システム環境が整っている事
(C) 教育や集客、システム導入等に使える、それなりの資金力がある事

 大手企業のOBの場合、「前の会社では」とか「前職では」って話になる事が多くて、優秀な人材やシステムがあることが前提でコンサルティングが始まる事が多い。しかし、実際の顧客の状況とは一致しない事ばかりで、何も実行できなくなっちゃうことがあるんだよね。

 でも実際の問題は、それだけじゃないんだ。従業員の意識改革から始めないと、大変な事が多いんだ。だから、仕事全体の流れを一から教え直したり、現場監督としての役割を説明するところから始めるんだ。

 コンサルティングだから、相談は会社の決定権者とやりとりするんだよね。主に社長や血族の後継者が多い。でもその途中で、新しいシステムの導入など、問題が度々発生する。例えば、工程管理ソフトの導入が急に決定したりする。導入の経緯はいろいろあるけど、経営者が現場でヒアリングして「忙しい」って言われたら、デジタル化して業務効率化を図るっていう一方通行的な決断がとても多い。

 でも、そういう経緯で導入されたシステムはほとんど使われず、使う人と使わない人が混在して、最終的にはデータが散らばって状況がますます悪化することになるんだ。従業員たちは無理やりやらされている感じがして、改善案も出てこないし、文句ばっかり言う事になる。そしてベテラン社員や職人はIT技術に興味がなく、システムを使ってくれない。

 私自身もwebに疎くて、ベテラン社員たちの気持ちはよく分かる。「今の状況でも特に困っていないから、新しい事を覚える気持ちがない」という感じなんだ。でも、「じゃあどうやって時間を確保できるのか?効率化できるのか?」は正直なところあまり考えていない。

 だから、俺自身も「そこは気合いと根性、愛と勇気」で何とか乗り切っていこうとしか言いようがなくて・・・。新人の教育については、仕事を覚えれば面白くなって自然とスキルが上がってくると思っていたけれど、若い人たちのモチベーションは必ずしも仕事に向けてではないので、いつも乗り越えられない、見えない壁の様なものがあると感じていた。そんな中、昔からの友人であるナオから連絡があったという経緯だよね。

長年の友人で自宅を建築してもらった縁

横田 ナカちゃんに連絡を入れたのは、コネクトカメラ(現場カメラ)の現場での実用性について客観的な意見を頂きたかったからです。

 ナカちゃんとの出会いは、2002年に私の家が火事になり、その家の建て直しをお願したことが始まりで、20年経った今でも大きなトラブルや改修も無く、長い付き合いが続いている。彼の家づくりのクオリティーは我が家が物語っていて、私の家を見て彼に家づくりを頼んだ友人もいたくらい。

 現場カメラの実用性の評価においては中途半端な技術的な知識は、かえって邪魔になります。技術的なことは全く分らない現場目線での評価が重要との考えて、彼に連絡したのがこのプロジェクトの始まりです。

 コネクトカメラは、デジタルやITリテラシーを持ちあわせない人たち活用してもらい、「明確な業務支援としての成果を提供すること」を目的に開発されたサービスです。彼以上の適任者は思いつきませんでした。

中原 俺は長年建築業界いるので、業界の常識がこびり付いてしまっているんだ。ナオが友人だったこともあり、そのあたりはガンガン指摘されたよね。そんな話をしているうちに「これはもしかすると業界が変わるのではないか!?」と思ったんだよ。

横田 色々と話している中で、私は逆にびっくりしてしまって。ナカちゃんの話は建築業界の悪いところが凝縮している話だなと思った。

 ただ、そこにはすごく勉強になる話もあってさ。その一つが、建築業界で働いている人たちは様々な背景を持っているという事。例えば、年齢層や職業観、収入や生活環境がとても裾野の広い業界だという事が分かって、これらは実際に当事者から聞いてみないと体感が難しいと思った。

 IT業界は20年ぐらい前から若年層を中心に人気の業界になって、男女を問わず業界への流入人口が右肩上がりで増えきた。そして、この業界に入ってくる人たちは、既に一定のデジタルやITに関する知識と好奇心があって、基本的な知識レベルを持ち合わせた人が集まって仕事をしているという特徴がある。

 例えば、IT業界ではPCでメールの送受信は当たり前に出来ることが前提だし、WIFIと言えばそれが何を意味するのかは理解してもらえる。でも、建築業界では下はデジタルネイティブの15歳から、上は80歳で現役だったりするので、それらの人々を同じ括りで見ることは正しくないという事がよく分かった。こういった背景は想像以上に複雑で、実際にナカちゃんに詳しい話を聞くことで実感が持てる理解ができた。

 建築業界に従事する人の裾野の広さはDX化を実現する上ではとても重要なポイントになると思うよ。ナカちゃんに指摘されるまでよく分かっていなかったし、IT業界側でそういった事を肌感覚で分かっている人は非常に少ないと思う。

中原 それはそうだよ。だって、俺はおまえの喋ってること8割くらい分からないもん(笑)

建設業界ではリモートワークは無理だと思う

中原 建築業界は、正直に言えばあまり育ちの良くない人も多いし、言う事を聞かない、ヤンチャな人が多い業界。誤解を恐れず言えば、あまり勉強をしてこなかった人も多い。そういう「体で稼いできた人」からすると、ITやデジタルの話をされても、それを学んで改善しようという気持ちは沸かない。むしろ、IT業界は暖かく涼しい部屋で楽して稼いでいるイメージがあって、反発心のほうが強いかもしれない。俺も工業高校卒業だから、その気持ちはよくわかるんだ。

 そういった業界だから、効率化といえば「大きな声を出して、怒鳴りつけて、怖い監督の言う事を聞かせる」という話になってしまう。とは言え、それが最近の若い人には通用しないという事も、よく分かっているつもりだよ。だからこそ、IT技術をうまく取り入れて、仕事を減らしたいとは常に思っている。

 でも我々現場側は、そもそもITの何が分からないのかが分からないし、そういった事を考えるだけのIT知識も持っていない。そして学ぼうともしないから、もうお手上げ状態。だから結局、気合根性、長時間労働といった話に戻ってしまう。でもそれでは部下は付いてこない事も分かっていて、困っているんだ。

 それと、もしもWEBやIT技術に頼る事で、今まで出来なかった事が出来るようになった場合、自分の今までの経験を否定された様な気持ちを強く持ってしまうんだ。一般に「職人」と言われている人は特にその傾向が強い。だから必死に抵抗しているという一面は否定できないな。

困っていることに気がつけていないのでは?

横田 とてもヒントになったのは、「学ぼうとしない、困っていない、困っていることに気が付いていない」という事。私からすれば、少しだけ学べば劇的に業務改善できるのに何故学ばないのだろうか?と思う事が多かった。そして、その疑問はナカちゃんと話をする中で、すごく整理された。

 その先の改善された未来を思い描くだけの経験がない、それを蓄える経験が建築業界では必要なかった、だから、学べば便利になるという事を思い描けないという建築業界で働く人の課題が分かった。逆に言えば、それさえ解決できれば、むしろ積極的に取り組んでくれる業界ではないかと思ったわけ。

中原 ナオは建築業界でもリモートワークが出来るって言うよな?それってどういう事なの?建築業界は特殊で、現場に行かなければ解決しない問題も多いから、リモートワークは難しいと思っているんだけど。

横田 例えば、遠隔現場の映像をネットワークカメラで撮影し、本社の経験豊富な建築士、施工管理技士、技術者へ共有できるだけでも様々な業務支援につながると思わない?

・現場からの進捗報告を現場映像と比較?
・資材が納品されたか否か?
・現場の駐車場は空いているか?
・時間通りに職人さんが現場に入ったか?
・各種報告書に使う映像の撮影忘れ防止
・施主さんへの進捗報告用の映像の撮影

60代の若手?異常な業界になってしまった。

中原 今、どこに行っても言われるのが、人手不足について。建築業界では60代でも「まだまだ若い」と言われてしまうくらい人がいない。

横田 よくニュース等で見かける話だよね。農業の世界でも同じような話をよく聞くよ。

 日本の食に関する自給率は40%を切っていて、輸入無しでは日本人の半分以上が飢え死になる現実がある。今、農業の世界でもスマート農業や農業DXといったIoTやデジタル化による大きな改革が始まっている。建築業界でも大手ゼネコンは既にここに着手していて、人手問題の解決に向けて動きだしている。でも特に建築業界では中小零細の動きはとても鈍い。このままだと大手以外の建築業者は取り残されてしまうと思うんだ。

高齢化と人材不足・働き方改革にどう立ち向かうのか?
立ちはだかるベテランの壁

中原 ベテラン壁問題は、どの会社にコンサルティングするときも課題となるポイントなんだよね。新しい事を始めようとする時に、建築会社では必ずと言っていいほど古参の社員が反対するんだ。現在60代以上の社員たちは建築業界がもっとも潤っていた80~90年代の経験から抜け切れていない人もまだまだ多い。もう30年も前の話なのにさ。

 会社によってはそのころの財産で何とか食いつないでいるといった所も多くある。しかし、これからを社会を担っていく20代30代、そして、これから経営層になってゆく40代50代には、その頃の財産はもう存在しない。

これらの、反対勢力にはどう対応してゆくアイデアを持っている?

横田 私は、それらは反対勢力にはならないのではないかと思っているんだ。確かに、何でも、かんでも反対する人はいるし、我々の年齢になってくると頑固になってくるものだ。でも私たちが考えている事、これから作り出す事は、そういったベテランの職人さんや現場監督さん達にこそ使ってほしい。

 これから人手不足が深刻化してきて、建築業界ではみんな簡単には引退出来なくなってくるだろう。ベテラン社員の力はやはり必要だよ。でも加齢に伴い体力や知力が落ちてくる事は否定できない。これらITのサービスはそういった事を補うという一面がある事も忘れないでほしい。ITだから若い人だけが対象とは全く思っていない。

中原 それは具体的にはどういった方法がある?

横田 例えばコネクトカメラ(現場カメラ)を例にあげてみよう。「コネクトカメラはクラウドにデータを自動保存して、タイムラプス動画を生成出来て、SNSとの相性も良い」みたいな話をすると、宇宙語のように聞こえるかもしれない。しかし、もっと簡単に考えてみてほしい。

 あれは、現場写真を常に勝手に撮り続けてくれて、全自動で動く写真アルバムだと言い換える事ができる。現場の写真が無い為に、片道1時間かけて撮影に行ったり、役所の申請で余計な時間を使った、という事が今までにあったはずだ。でも技術のおかげで、それらが簡単に解決している。そして、その為に使用者が何かをする必要はないんだ。勝手に動いているのだから。これだったら、ベテラン社員の力になりこそすれ、邪魔をする事はない。移動時間を減らせるだけでも、体力的には大分楽になるはずだ。

中原 なるほど。そういった事は他でも可能だと?

横田 そこはぜひ期待して欲しい。私もITの業界に黎明期から携わってきたけれども、IT業界はそういった技術を常に磨いている場所なんだ。建築業界の負の部分を改善できる方法はいくらでもあると考えている。

 そういえば、先ほど話にあった建築に携わる人々の幅みたいな所をもう少し詳しく教えてくれない?

人種のサラダボウルな建設現場

中原 俺は、工業高校卒業後、東京に出てきて、地場の建設会社に入社したんだけれども、当時は休みもなく給料も安くといった、あまり恵まれた環境ではなかった。ただ、その会社は地場では影響力のある会社だったから、経験には恵まれたんだ。個人住宅から大型の店舗建築、改装、公共工事と様々な仕事をする事ができた。ハッキリ言って、建築現場にはあまり育ちのよくない奴が多かったし、現在も多い。最終学歴が中学校という職人は珍しくない。その後は、独立して自分で工務店を経営していて、当時の人脈で仕事をしていたから、大体同じような職人や会社と仕事をしていたんだ。

 その後縁があって、上場企業の大手デベロッパーでマンション建設の施工管理を担当する事になった。4~5年くらいやってたかな。仕事自体は前の経験があったから、既存社員よりも、むしろ有利な立場でこなす事が出来たのだけれども、一般社員の基礎的なレベルの差には驚いた。大手デベロッパーには国公立、難関私立大学の出身者が多くて、社内の書類処理や、会話の理解力、やり取りの正確性は地場企業と比べて、雲泥の差があった。

 先ほど、少し話したけれども、その後コンサルタントとして地場中堅企業へ行くことになった。そして、地場レベルの会社だと、なかなかそこまでの人材は集まらないという現実を肌で体感したよ。

出身大学と仕事の出来は必ずしも比例はしないけど・・・

中原 だからと言って、学歴や出身大学と仕事の出来は必ずしも比例はしない。ただ、確率的にはやはり素頭がよい人たちは覚えも良かったと思う。でもね、そんな優秀な彼らでも・・・例えば東京大学工学部建築学科を卒業した1年生社員が、大ベテランの中卒大工に怒鳴られる、といった事が日常の建築業界。だんだんと現場側の雰囲気に引っ張られてゆくという事がとても多い。どういう事かと言うと、色々と大雑把になってゆく。典型例としてはまずメールの返信をしなくなる。そしてメールを印刷してFAXして確認電話をするなんて事を始めるともう一人前の業界人だ(笑)みんなメールを見ないし、見ても返信しないから電話しないと確認できない。はっきり言って2度手間だよ。でも、それが常識なんだ。

 他の業界では、東大出身者が中卒と日常的に絡むといった事はないと思うんだ。特に現場監督は仕事のふり幅がとても大きい。

 ここまで幅の広い人種のるつぼで仕事をする事は簡単ではないし、頭の良し悪しというよりは、気合根性や勘の良さ、愛嬌といった、あまり数字化出来ない事のほうが大切だったりもする。こういった事は建築業界独特なのではないかと思うね。だから、かなり幅のある人々皆が使えるようなサービスというのはあまりない業界だと思っている。

 正直に言えば職人にパソコンを使わせるのは無理だ。スマホアプリもちょっとでも難しいとダメ。

 実際に、大手デベロッパーに勤めていた際にも様々なシステムは導入されたけれども、デベロッパー社員は使用するけれど、現場が使用しないので結局使われなかったなんて事例は本当に多かった。

まるで空気を吸うかのような意識しないデジタル化を目指したい

横田 それはとても興味深い視点だと思う。今まで、みんな何となくは分かっていたけれども、言語化してこなかったし、ある種タブー視されていた部分もある。でも、これから若い労働力が減少してゆく日本では、あまりきれいごとばかり言っていられないし、時間もあまりない。

 私たちのやりたい事はそこにあるんだ。IT業界側からの提案を一方的に押し付けるだけではなくて、本当に現場で使用してもらえるもの、若手からベテランまで、現場作業員からオフィスワーカーまで、みんなが同じ視点で便利だと思ってもらえるものが必要だと考えている。

 だから、特殊なことや画期的な技術という視点だけではなくて、「なんとなく習慣でやっている面倒で手間のかかる事」をどんどん見つけて、それらを自動化する。まるで空気の様に、何事も無かったかのように自動化する。だから、そもそも困っていたことすら忘れてしまう。そんな事が出来れば良いのではないかと思っている。

 だってさ、今時、外出時に公衆電話の場所とか気にしないでしょう?それは、みんなが当たり前のように携帯電話を持っているからだよ。でも、これは、たった30年ぐらいの時間軸の中で劇的に進化したモバイルネットワーク技術がもたらした結果なんだよね。誰もそんな事を考えていない思うけど(笑)

中原 最近原材料費の高騰がすごい。知り合いの工務店では2022年に2回の値上げで戸建て住宅の建築費用が500万円近く上昇したという会社があった。それが原因で、大手ビルダーでも住宅が売れにくくなってきていて、ボーナスが出なかったという話も耳にした。

デジタル化、IT化、建築・建設DXではそういった事も解決できると思う?

デジタル化はなんでも出来る魔法の杖ではない。
人が何かを達成するための手段にすぎない。

横田 まだ、正直なところは分からない。でもそれを解決し続けてきたのがIT業界だし、みんなもその恩恵は受けているはずだ。携帯電話の料金は昔の移動電話の頃から比べたら格段に安くなった。国際電話なんてSkypeやLINEをつかえば無料でしょ。建築業界もそういったチャンスは十分にある。

 一昔前はシステムの導入というと、その会社専用のシステムを用意して、プログラムをオーダーメイドでこしらえていた。しかし、今では様々なツールが発展したおかげで、最先端の技術が月に数千円、場合によっては数百円といった価格で利用できるようになってきた。スマホとインターネットの普及というのが大きな要因だと思っている。多くの人がスマホという高機能端末を持っているから、操作機械を新たに購入してもらう必要がなくなった。高機能情報インフラが環境的に整備された時代とも言える。

 建築DX(デジタルトランスフォーメーション)は働く人にとって、もっと寄り添ってゆくべきものだと思う。今はまだ黎明期だ。だから、どちらかというとIT業者側の押しつけのようなサービスや製品が多い。でも私たちは現場側の生の声を常に入手できるという強味がある。

 リモートワークが難しいと言われている建築業界だけれども、CADが一般的になって、家庭用PCでも十分に動かせるようになってきたから、設計士の人はリモートワークが一部可能になっているよね。とは言え、建築は現地に物が立つ。だから、現地確認は必要だし無くならない。でもね、それらも発想の転換で解決できる方法が必ずあると思うんだ。

 日本はこれから人口が減ってゆく未来が待っているけれども、今まで作ってきた建築物はそこに存在していて、それらの老朽化による改築、修繕は待ったなしの状態だ。そこには必ずベテランの経験が必要になってくる。でも、その時にベテランに体力的な負荷をかけていたら、誰も仕事をしてくれなくなってしまうはずだ。そういった視点からも、デジタル化で効率化できる事、自動化できる事をどんどん見つけてゆくのは我々の仕事だと思っている。

横田尚正×中原弘之 対談

横田尚正 × 中原弘之による対談です。
建築業界とIT業界の生き字引が、その誕生背景と将来展望を語りました。
「建築現場のデジタル嫌いを何とかしたい!」という思いについて対談していますので、ぜひご覧ください!

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